HOME | 過去のお知らせ・イベント | お知らせ | 創立120周年記念式典 学校長式辞

広がる海、まだ見ぬ景色へ

逗子開成創立120周年記念式典での学校長式辞

 
 
逗子開成中学校・高等学校
小和田亜土 校長 
 

うららかに春風も心地よい頃、本日、こうして逗子開成創立120周年の記念式典をおこなうことができました。これもひとえに日頃より本校に関わっていただいている皆様のご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。
 
また、桐ケ谷逗子市長様、神奈川県私立中学高等学校協会の工藤理事長様をはじめ、ご来賓の皆様には、ご多用のところ足をお運びいただきまして、誠にありがとうございます。
 
世界がコロナ禍から脱しつつあるなか、本校は創立120周年を迎えました。世界中の人々がコロナウィルスと対峙し、各々の文化的慣習や日常の生活習慣の見直しを余儀なくされるなか、あるべき社会の姿があらためて問われています。わが国の学校教育のあり方も従来のかたちを見直し、ICT教育など新たな教育活動が展開されています。
 
変化を強いられ先の読みにくい時代において学校で育むべきかけがえのないものは何か。本校は、この問いに対して、本校では、コロナ禍がもたらした急激な社会変化をふまえながらも、この120年にわたる教育活動の積み重ねのなかから、その育むべき大切なものを再認識し新たな歩みを進めていく所存です。
 
逗子開成は、私立東京開成中学校の分校として1903(明治36)年4月18日に誕生しました。当初は「各種学校私立第二開成学校」とよばれ、創立者は当時東京開成中学校の校長を務められていた田邊新之助先生でした。開校当初は逗子池子の東昌寺の境内に居を構えましたが、その年の秋には、逗子海岸の中央にあたるこの逗子新宿の地に移転しました。そして、1909年には東京開成中学校から分離独立して、私立逗子開成中学校となりました。
 
逗子開成は、今日までの間に、いくたびか難しい局面を経験してきました。例えば、関東大震災において本校校舎が全壊しました。太平洋戦争の前後において教育活動は軍事的な影響を受けた一方で戦後民主化政策のもとでその内容が大幅に変更されました。また、本校生徒や教員が命を落とした痛ましい七里ガ浜ボート遭難事故や山岳部の八方尾根遭難事故の発生は、あるべき安心・安全な教育活動の教訓として今日まで語り継がれています。
 
各々の困難は、当時の教職員や生徒、本校関係者の方々のお力により乗り越えられてきましたが、その都度、その時代性や社会の動向を見据えた新たな教育活動が掲げられてきたことは、特筆すべきことだと思います。そしてそのすべてに、本校の建学の精神である「開物成務」の意思が通底していることは言うまでもありません。
 
今日の逗子開成における教育活動の指針は、1985年にその大枠が示されました。1984年に理事長に就任された徳間康快先生は、中学の募集を再開するにあたり、カリキュラムを見直し、ヨット実習や遠泳実習を含む海洋教育、映像教育、ICT教育、海外研修などを打ち出し、大幅な学校改革を進めました。現在、これらの教育活動はさらにステップアップし発展させたかたちで行なわれています。ぞの結果、今や学力はもとより生徒の主体性や協同性も大いに伸長しつつあると私は感じております。
 
主体性や協同性という観点からみれば、創立120周年を迎えるにあたり、生徒が様々なプロジェクトを立ち上げて取り組み、式典では多彩なプレゼンテーションを披露してくれることになりました。120周年のスローガンやロゴマークも生徒によって作成されましたし、本日の記念式典における司会を務めているのは高校1年生の北島くんです。式典での生徒による司会者の登用は稀なことではないでしょうか。
 
これから世界はますます変化の激しい、予測の立ちにくい時代に入っていくでしょう。その際、主体性や協同性は生き抜くうえで欠かせない価値をいっそう帯びていくに違いありません。今の生徒を見ていると、彼らはやがてそれぞれに社会で活躍していくだろうと期待するばかりです。
 
時間というものは人間が生み出した概念ですが、人の成長や教育という視点からみたとき、その時間とは、単なる物理的な時間というよりも、過去と現在と未来が混在した「今」という時間、いわば「生きられた時間」と捉えることで、より深い意味合いを帯びるのではないでしょうか。私たちは「今」という時間のなかに、過去の記憶をよみがえらせ、現在の状況を認識し、未来の展望を浮かび上がらせる存在として、どこに向かうともわからない時代を意味づけて生きていきます。
 
120周年を迎えたこの日に、あらためてこのような視点から、つまり本校の120年の歴史とこれからの本校の展望を結び合わせる「今」という時間を皆さまと共有する機会をもつことができて大変嬉しく思います。生徒の皆さんは、先輩方の歴史を支えに自信をもって生きていきましょう。
 
以上をもちまして、校長の式辞といたします。